ovacoの化粧品で使用されている「EGG B.P Cell」。一般には「鶏卵幹細胞」と呼んでいますが、化粧品に生きた幹細胞そのものが入っているわけではありません。

EGG B.P Cellは、ニワトリ由来の多能性細胞を培養する過程で得られる「ニワトリ多能性細胞培養順化培養液」を利用した化粧品原料です。

ovacoがこの原料に注目した背景には、これまでの記事で解説してきた「ターンオーバー」「幹細胞」「多能性」「細胞同士の信号」「培養上清液」という研究の流れがあります。

この記事では、EGG B.P Cellとは何か、なぜ鶏卵由来なのか、多能性細胞と培養順化培養液の関係、そしてovacoが重視する「信号の質と量」という視点まで詳しく解説します。

EGG B.P Cellとは?

EGG B.P Cellは、ovacoで採用している鶏卵由来の細胞培養技術を利用した化粧品原料です。

ovacoではわかりやすく「鶏卵幹細胞」と呼んでいますが、実際に化粧品へ配合されているのは幹細胞そのものではなく、ニワトリ由来の多能性細胞を培養した際に得られる培養順化培養液です。

韓国化粧品協会の成分辞典では、英名をRed Junglefowl Blastoderm Pluripotent Cell Culture Conditioned Mediaとし、赤色野鶏の胚盤から分離した多能性細胞を培養した後、細胞を除去した培地として登録されています。

つまり、EGG B.P Cellを理解するためには、「鶏卵」「多能性細胞」「培養順化培養液」という3つのポイントを見ることが重要です。

EGG B.P Cellは「動物由来」×「多能性細胞」

これまでのコラムでは、幹細胞関連原料を「何由来か」という視点と、「どのような分化能力を持つ細胞か」という視点から見てきました。

EGG B.P Cellは、この整理で見ると、動物由来の多能性細胞を培養して得られる培養順化培養液に位置づけられます。

ここでいう「多能性」とは、ひとつの細胞がさまざまな種類の細胞へ分化できる性質を指します。

ただし、EGG B.P Cellという化粧品原料そのものが、人の体内で多能性細胞として働くという意味ではありません。

多能性細胞そのものではなく、その細胞を培養する過程で得られる培養順化培養液を利用しているという点が重要です。

幹細胞の自己複製・分化・多能性については、こちらの記事で詳しく解説しています。

幹細胞とは?自己複製・分化の仕組みとovacoが研究する理由を見る

「鶏卵幹細胞」という名前でも、幹細胞そのものではない

「鶏卵幹細胞」と聞くと、卵から取り出した幹細胞そのものを化粧品へ配合しているように感じるかもしれません。

しかし、EGG B.P Cellで利用されるのは、生きた幹細胞そのものではありません。

ニワトリ由来の多能性細胞を培養すると、細胞は培養環境の中へさまざまな物質を分泌します。その培養後の液体から細胞を取り除いたものが、培養順化培養液です。

ovacoが注目しているのは、細胞そのものではなく、その細胞が培養中に周囲へ送り出すさまざまな「信号」です。

幹細胞と培養上清液・培養順化培養液の違いについては、252の記事で詳しく解説しています。

幹細胞化粧品とは?ヒト・植物・動物由来の違いと選び方を見る

なぜovacoは「鶏卵」に着目したのか

EGG B.P Cellの特徴を理解するうえで重要なのが、なぜ鶏卵由来の多能性細胞に着目したのかという点です。

ヒト由来の多能性細胞は、幹細胞研究の中でも非常に重要な存在ですが、倫理面や供給、取り扱いなど、化粧品原料として考えるうえではさまざまなハードルがあります。

一方、脂肪や骨髄、臍帯などの組織に由来する幹細胞も広く研究されていますが、細胞の由来や分化状態が異なれば、培養中に分泌される物質の構成も異なり得ます。

そこでovacoの研究チームが注目したのが、発生初期のニワトリ胚盤に存在する多能性細胞でした。

発生初期の多能性細胞を培養し、その培養過程で生み出される「信号」を化粧品原料として活用できないか。

この考え方から生まれたのが、EGG B.P Cellです。

つまり、ovacoが鶏卵に注目した理由は、「卵だから美容によい」という単純なものではありません。

発生初期に存在する多能性細胞と、その細胞が培養中に生み出す分泌物に注目したということです。

ovacoが鶏卵由来の多能性細胞と培養過程に注目した理由を説明する図

発生初期の細胞と「8細胞」という説明について

EGG B.P Cellについては、開発元や従来のovacoの説明の中で、受精卵が細胞分裂を始めた発生初期の段階に着目した原料として紹介されてきました。

その中では「3分割目」「8細胞の段階」という表現が使われることがあります。

ただし、ニワトリの胚発生を、ヒトの初期胚の分類とそのまま同一視して「8細胞だから多能性」と説明するのは適切ではありません。

韓国化粧品協会の成分登録では、EGG B.P Cellに関連する原料は、赤色野鶏の胚盤(blastoderm)から分離した多能性細胞を培養して得られる培養液として定義されています。

そのため本記事では、細胞分裂の回数そのものよりも、「ニワトリ胚盤由来の多能性細胞を培養し、その培養順化培養液を利用した原料」という点をEGG B.P Cellの本質として説明しています。

EGG B.P Cellはどのように作られる?

EGG B.P Cellでは、ニワトリの胚盤に由来する多能性細胞を培養します。

細胞を培養すると、培養環境の中へタンパク質、サイトカイン、成長因子など、さまざまな物質が分泌されます。

その後、培養した細胞そのものを取り除き、細胞を培養していた液体を化粧品原料として利用します。

開発元の説明では、一度得られた細胞を培養・保存し、必要に応じて培養を行いながら原料を製造する考え方が採られています。

つまり、製品に配合されるのは培養した細胞そのものではなく、細胞を培養する過程で得られる培養順化培養液です。

そのため、EGG B.P Cellの特徴を見るときに重要なのは、単に「鶏卵由来」ということだけではありません。

どのような細胞を培養し、その培養過程でどのような物質が、どのくらい生み出されているのか。

そこが、ovacoがEGG B.P Cellを見るうえで重視しているポイントです。

EGG B.P Cellがニワトリ胚盤由来の多能性細胞を培養し培養順化培養液として得られる流れを示す図

ovacoがEGG B.P Cellで重視する「信号の質と量」

ovacoでは、細胞同士がやり取りする情報を、わかりやすく「信号」という言葉で説明しています。

細胞は単独で働いているわけではなく、周囲からさまざまなシグナルを受け取りながら、その振る舞いを調節しています。

培養された細胞も、成長因子やサイトカインなど、さまざまな物質を培養環境へ分泌します。

そのためovacoでは、培養順化培養液を見るときに、「何由来か」だけではなく、「どのような信号が、どのくらい存在しているのか」を重要な視点として捉えています。

重要なのは「どんな信号が、どのくらいあるか」

同じ「幹細胞由来」「培養順化培養液」という名称であっても、その中身がすべて同じとは限りません。

どのような種類の信号が含まれているのか、どの程度存在しているのか、それらがどのような組み合わせやバランスになっているのか。

ovacoでは、この視点を「信号の質と量」として大切にしています。

また、細胞の種類や分化状態、培養条件、培養期間、回収方法、製造工程などが異なれば、培養液中に含まれる分泌物の構成も変わり得ます。

だからこそEGG B.P Cellについても、「鶏卵由来だからよい」というだけではなく、どのような性質を持つ細胞を使い、その細胞がどのような信号を生み出すのかという研究背景まで見ることが重要です。

EGG B.P Cellでovacoが重視する信号の種類・量・組み合わせ・培養条件を説明する図

「信号の量が多いほどよい」という意味ではない

一方で、「成長因子の種類が多いほどよい」「濃度が高いほどよい」という単純な話ではありません。

細胞は、さまざまなシグナルを組み合わせて受け取りながら、その振る舞いを調節しています。

重要なのは、単純な「多い・少ない」ではなく、どのような信号が、どのくらい、どのようなバランスで存在しているのかということです。

これが、ovacoがEGG B.P Cellを考えるうえでも大切にしている「信号の質と量」という考え方です。

EGG B.P Cellの正式な成分名・英名は?

ovacoでは「鶏卵幹細胞」「EGG B.P Cell」と呼んでいますが、化粧品成分としては、より具体的な名称があります。

日本語で使用されている名称:
ニワトリ多能性細胞培養順化培養液

韓国化粧品協会の登録英名:
Red Junglefowl Blastoderm Pluripotent Cell Culture Conditioned Media

韓国化粧品協会の成分辞典では、この原料について、赤色野鶏の胚盤から分離した多能性細胞を培養し、細胞を除去した培地であると説明されています。

EGG B.P Cellに関連するニワトリ多能性細胞培養順化培養液の成分登録情報

EGG B.P Cellの国際的な評価

EGG B.P Cellは、海外の化粧品展示会でも紹介されてきた原料です。

ovacoの資料では、2017年11月に香港で開催されたCOSMOPROFに「EGG B.P Cell」が紹介された記録があります。

こうした国際的な展示会で取り上げられたことも、EGG B.P Cellがovacoの研究背景を象徴する原料のひとつとして位置づけられている理由です。

EGG B.P CellのCOSMOPROF ASIA関連資料

EGG B.P Cellと肌のターンオーバーの考え方

ovacoがEGG B.P Cellへたどり着いた背景には、肌のターンオーバーを細胞レベルから考えてきた研究の流れがあります。

肌のターンオーバーを考えると、表皮の細胞が生まれ、分化し、肌表面へ移動する仕組みに行き着きます。

その細胞の増殖や分化を考えると、幹細胞や周囲の細胞との情報伝達、つまり「信号」という考え方につながります。

さらに、その「信号」を考えていくと、細胞を培養する過程でどのような物質が分泌されるのかという培養順化培養液の研究へつながります。

ターンオーバー → 幹細胞 → 細胞間の信号 → 培養順化培養液 → EGG B.P Cell

EGG B.P Cellは、こうしたovacoの研究の流れの延長線上にある原料です。

肌のターンオーバーと約28日の周期については、こちらの記事で詳しく解説しています。

肌のターンオーバーとは?28日周期の意味・年齢との関係を見る

EGG B.P Cellについてよくある疑問

卵を大量に使って作っているの?

EGG B.P Cellは、毎回大量の卵から同じ工程で抽出して化粧品へ直接配合するという考え方ではありません。

開発元の説明では、発生初期のニワトリ胚盤由来の細胞を得た後、その細胞を培養・保存し、必要に応じて培養を行います。

そして化粧品原料として利用するのは、その培養過程で得られる培養順化培養液です。

培養した細胞そのものは化粧品に入っている?

いいえ。EGG B.P Cellで利用されるのは、培養した細胞そのものではありません。

培養後に細胞を除去し、細胞が培養中に分泌した物質を含む培養順化培養液を化粧品原料として利用します。

卵アレルギーでも関係ない?

EGG B.P Cellは、食用の卵白や卵黄そのものを配合することとは異なります。

ただし、ovaco製品には商品によってEGG B.P Cell以外の卵由来成分を含む場合があり、配合成分は製品ごとに異なります。

卵由来成分にアレルギーがある方や心配のある方は、使用前に各商品の全成分表示を確認してください。

EGG B.P Cellを配合しているovaco製品

EGG B.P Cellは、ovacoの複数のスキンケア製品に採用されています。

例えば、オバコ セラムやオバコ ローションでは、全成分表示に「ニワトリ多能性細胞培養順化培養液」が記載されています。

ただし、化粧品はひとつの注目原料だけでできているわけではありません。

実際の製品では、EGG B.P Cellに加えて、ペプチド、保湿成分、油性成分など、さまざまな原料を組み合わせて設計されています。

そのため、化粧品を選ぶときは、EGG B.P Cellという一つの原料だけではなく、製品全体の処方や使用目的まで含めて見ることが大切です。

まとめ

  • EGG B.P Cellは、ovacoで「鶏卵幹細胞」と呼んでいる化粧品原料。
  • 生きた幹細胞そのものではなく、ニワトリ胚盤由来の多能性細胞を培養して得られる培養順化培養液を利用している。
  • EGG B.P Cellは「動物由来」かつ「多能性細胞を利用した培養順化培養液」という位置づけで理解できる。
  • ovacoが鶏卵に注目した理由は、卵そのものではなく、発生初期の多能性細胞と、その培養過程で得られる分泌物にある。
  • 細胞の種類や分化状態、培養条件が異なれば、培養液中に含まれる分泌物の構成も変わり得る。
  • ovacoでは、「どのような信号が、どのくらい、どのようなバランスで存在するのか」という「信号の質と量」を重視している。
  • 「信号の量が多いほどよい」という意味ではなく、その種類・量・組み合わせ・培養背景まで含めて考えることが重要。
  • EGG B.P Cellは、ターンオーバー、幹細胞、細胞間の信号を研究してきたovacoの考え方の延長線上にある原料。

EGG B.P Cellは、「珍しい鶏卵由来成分」というだけの原料ではありません。

ovacoが肌のターンオーバーを考え、細胞の増殖と分化を考え、幹細胞や細胞同士の「信号」を研究していく中で、「どのような細胞を培養し、そこからどのような信号が生み出されるのか」という視点からたどり着いた原料です。

だからこそovacoでは、「鶏卵幹細胞」という言葉だけではなく、どのような細胞から、どのような方法で、どのような信号を持つ原料が生まれているのかまで理解することを大切にしています。

参考文献・参考資料