ovacoが「幹細胞」という言葉に注目しているのは、単に美容業界で注目されている成分だからではありません。
肌のターンオーバーを突き詰めて考えていくと、「新しい細胞はどこから生まれるのか」「細胞はなぜ異なる役割を持つようになるのか」「その働きは何によって調節されているのか」という疑問に行き着きます。
その仕組みを理解するうえで欠かせない存在が、幹細胞です。
ovacoでは、配合成分だけを見るのではなく、肌がどのように生まれ変わり、細胞がどのように生まれ、分化し、周囲からどのような「信号」を受け取っているのかという仕組みまで遡って考えることを大切にしています。
この記事では、幹細胞の基本的な働きである「自己複製」と「分化」、幹細胞の種類や多能性、肌の更新との関係、そしてovacoがなぜ細胞レベルの研究まで重視しているのかを解説します。
幹細胞とは?
幹細胞とは、自分と同じ性質を持つ細胞を生み出す能力と、異なる種類の細胞へ変化する能力を持つ細胞です。
私たちの身体では、古くなった細胞が失われる一方で、新しい細胞が継続して生み出されています。
そのような組織の維持や修復を支える重要な存在のひとつが幹細胞です。
幹細胞の特徴を理解するために、まず2つの基本的な能力を見てみましょう。
幹細胞が持つ2つの能力
1.自己複製能
自己複製能とは、自分と同じ性質を持つ幹細胞を生み出す能力です。
幹細胞は分裂を繰り返しながら、幹細胞としての性質を保った細胞を生み出すことができます。
この能力があることで、幹細胞そのものがすぐになくならず、長期間にわたって新しい細胞を供給する仕組みを維持できます。

2.分化能
分化能とは、別の役割を持つ細胞へ変化する能力です。
幹細胞は、周囲の環境やさまざまなシグナルの影響を受けながら、必要に応じて特定の種類の細胞へと分化していきます。
例えば、血液をつくる造血幹細胞は、赤血球や白血球、血小板などの血液細胞を生み出します。

幹細胞にはどんな種類がある?
「幹細胞」とひとことで言っても、すべて同じ性質を持っているわけではありません。
由来や、どの範囲の細胞へ分化できるかによって、さまざまな種類があります。
ES細胞
ES細胞(胚性幹細胞)は、発生の初期段階にある胚から得られる多能性幹細胞です。
身体を構成する非常に多くの種類の細胞へ分化できる能力を持っています。
iPS細胞
iPS細胞(人工多能性幹細胞)は、皮膚などの体細胞へ特定の因子を導入することで、多能性を持つ状態へ初期化した細胞です。
ES細胞と同様に、さまざまな種類の細胞へ分化する能力を持つため、再生医療や創薬など幅広い分野で研究されています。
組織幹細胞
組織幹細胞は、私たちの身体のさまざまな組織に存在し、その組織を維持するための細胞を生み出しています。
例えば、造血幹細胞は血液細胞へ、神経幹細胞は神経系の細胞へと分化します。
多能性幹細胞のように身体を構成するほぼすべての細胞へ分化できるわけではなく、分化できる範囲がある程度限定されているのが特徴です。
「全能性」「多能性」「多分化能」は何が違う?
幹細胞について調べると、「全能性」「多能性」「多分化能」という言葉が出てきます。
これらの違いは、単純な細胞分裂の回数ではなく、どこまで多くの種類の細胞や組織へ分化できるかという能力の幅で考えます。
全能性(totipotency)
全能性とは、身体を構成する細胞だけでなく、個体発生に必要な胚外組織を含めて形成できる能力を指します。
受精卵やごく初期の胚の細胞が代表的です。
多能性(pluripotency)
多能性とは、身体を構成する非常に幅広い種類の細胞へ分化できる能力です。
ES細胞やiPS細胞が代表的です。
この「多能性」という言葉は、ovacoが採用しているEGG B.P Cellを理解するうえでも重要なキーワードになります。
多分化能(multipotency)
多分化能とは、特定の組織や細胞系統の中で、複数の種類の細胞へ分化できる能力を指します。
例えば造血幹細胞は、血液を構成する複数の細胞へ分化することができます。
肌の更新にも幹細胞が関わっている
肌は、一度つくられたらそのまま存在し続ける組織ではありません。
表皮では、古くなった細胞が肌表面から失われる一方で、新しい細胞が継続的に生み出されています。
そのためには、新しい細胞を供給し続ける仕組みが必要です。
表皮には幹細胞や前駆細胞が存在し、自己複製と分化を繰り返しながら、組織の維持に関わっています。
前の記事では、この細胞の更新を「肌のターンオーバー」という視点から詳しく解説しました。
肌のターンオーバーとは?28日周期の意味・年齢との関係を見る
幹細胞の働きを左右する「信号」
幹細胞は、単独で好きなタイミングに自己複製や分化を行っているわけではありません。
幹細胞の周囲には、「幹細胞ニッチ」と呼ばれる微小環境があり、周囲の細胞、細胞外マトリックス、成長因子などからさまざまな情報を受け取っています。
こうした周囲からのシグナルによって、幹細胞が休止状態を保つのか、自己複製するのか、増殖するのか、分化するのかといった振る舞いが調節されています。
ovacoでは、この複雑な細胞間の情報伝達を、わかりやすく「信号」という言葉で説明しています。
重要なのは「信号があること」だけではない
細胞の働きを考えるうえで重要なのは、単に何らかのシグナル物質が存在することだけではありません。
どのような種類の情報が、どのような組み合わせで、どの程度の量・濃度で、どのタイミングに伝わるのか。
こうした複数の条件が組み合わさることで、細胞の振る舞いは調節されています。
つまり、元記事でovacoが大切にしてきた「信号の質と量」という考え方は、単純に「成分が多ければよい」という意味ではありません。
細胞にどのような情報が、どのような条件で伝わるのかまで考えることが重要だということです。
肌が傷ついたときにも細胞同士の情報伝達が働く
肌が傷つくと、身体では傷を修復するために複数の細胞が連携して働き始めます。
炎症に関わる細胞、表皮の細胞、線維芽細胞などがさまざまなシグナルをやり取りしながら、細胞の移動、増殖、組織の再構築などを進めていきます。
幹細胞や前駆細胞も、こうした周囲からの情報を受け取りながら組織の維持や修復に関わります。

ovacoが「肌再生を考えるうえで信号が重要」と説明してきた背景には、細胞は単独で働いているのではなく、周囲からの情報を受けながら振る舞いを変えているという考えがあります。
幹細胞が再生医療で注目される理由
幹細胞は、自己複製能と分化能を持つことから、再生医療の研究でも重要な存在です。
失われた細胞や組織を補うこと、組織の修復を支えることなどを目的として、さまざまな幹細胞や幹細胞由来の技術が研究されています。
ただし、医療で用いられる幹細胞そのものと、化粧品で使用される幹細胞関連原料は同じものではありません。
「幹細胞」と「幹細胞培養上清液」は別のもの
美容医療や化粧品について調べていると、「幹細胞培養上清液」や「培養順化培養液」という言葉を目にすることがあります。
ここで重要なのは、幹細胞そのものと、幹細胞を培養した際に得られる培養上清液・培養順化培養液は別のものだということです。
細胞を培養すると、その過程で細胞からさまざまな物質が周囲の培養液へ分泌されます。
その培養後の液体から細胞そのものを取り除いたものが、培養上清液や培養順化培養液などと呼ばれます。
化粧品で使われる「幹細胞」という言葉では、実際に何が配合されているのかを区別して考えることが重要です。
培養液・培養上清液の違いや、ヒト・植物・動物由来の幹細胞関連原料については、次の記事で詳しく解説しています。
ovacoが「成分」だけではなく細胞の仕組みまで考える理由
化粧品を見るとき、「何が配合されているか」はもちろん重要です。
しかしovacoでは、成分名や配合量だけを見るのではなく、その成分がどのような考え方から選ばれ、肌のどの仕組みに着目しているのかまで考えることを大切にしています。
肌のターンオーバーを考えると、細胞の増殖と分化に行き着きます。
細胞の増殖と分化を考えると、幹細胞に行き着きます。
そして幹細胞の働きを考えると、周囲の細胞や組織との情報伝達、つまり「信号」という考え方につながります。
さらに、その情報伝達を研究していくと、細胞を培養する過程でどのような物質が生まれるのかという視点へとつながっていきます。
このようにovacoでは、ひとつの美容成分だけを見るのではなく、肌がどのように維持され、細胞がどのように働いているのかを細胞レベルから理解し、その考え方を商品設計へつなげることを大切にしています。
その研究の先にある「EGG B.P Cell」
こうした幹細胞、分化、多能性、細胞間のシグナルという考え方の先にあるのが、ovacoが採用している「EGG B.P Cell」です。
EGG B.P Cellは、ニワトリ由来の多能性細胞を培養した際に得られる培養順化培養液を利用した化粧品原料です。
つまり、250で説明してきた「多能性」「細胞培養」「信号」という考え方が、ovacoの商品開発へどのようにつながっているのかを具体的に見ることができるのがEGG B.P Cellです。
EGG B.P Cellの由来、開発背景、INCI、国際評価については、こちらの記事で詳しく解説しています。
鶏卵幹細胞「EGG B.P Cell」とは?特徴・由来と化粧品への応用を見る
まとめ
- 幹細胞には、自分と同じ性質を持つ細胞を生み出す「自己複製能」と、異なる細胞へ変化する「分化能」がある。
- 幹細胞にはES細胞、iPS細胞、組織幹細胞などがあり、分化できる範囲はそれぞれ異なる。
- 全能性・多能性・多分化能は、単純な細胞分裂回数ではなく、分化できる能力の幅によって考える。
- 肌の維持にも幹細胞や前駆細胞が関わっている。
- 幹細胞の自己複製や分化は、周囲の「ニッチ」から送られるさまざまなシグナルによって調節される。
- ovacoでは、こうした細胞間の情報伝達を「信号」という言葉で説明している。
- 重要なのはシグナルが存在することだけではなく、その種類、組み合わせ、量・濃度、タイミングなども含めた情報伝達である。
- ovacoでは、成分だけでなく、肌や細胞がどのように働くのかという仕組みまで遡って商品開発を考えている。
- その研究の先に、鶏卵由来の「EGG B.P Cell」という原料の採用がある。
幹細胞について知ることは、単にひとつの美容成分について知ることではありません。
肌がどのように新しい細胞を生み出し、どのような情報を受け取りながら組織を維持しているのか。
その仕組みを理解することが、ovacoが考えるスキンケア研究の土台になっています。
参考文献
-
National Institutes of Health. Stem Cell Basics.
幹細胞の自己複製・分化、幹細胞の基本的な分類について。 -
京都大学iPS細胞研究所(CiRA)「iPS細胞について」
iPS細胞の定義、多能性、再生医療研究について。 -
Chacón-Martínez CA, Koester J, Wickström SA. Signaling in the stem cell niche: regulating cell fate, function and plasticity. Development. 2018.
幹細胞ニッチからの生化学的・機械的・構造的シグナルと、自己複製・分化・細胞運命の調節について。 -
From gut to glutes: The critical role of niche signals in the maintenance and renewal of adult stem cells. 2020.
幹細胞ニッチから送られるシグナルが、休止、自己複製、増殖、分化をどのように調節するかを整理したレビュー。 -
Clevers H, Loh KM, Nusse R. Stem cell signaling. An integral program for tissue renewal and regeneration: Wnt signaling and stem cell control. Science. 2014.
組織の維持・再生における幹細胞とニッチ由来シグナルの関係について。