肌の保湿というと、「化粧水をつける」「クリームを塗る」といったスキンケアを思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。
しかし、肌にはもともと水分を取り込み、角層の中に保持する仕組みが備わっています。
その中心的な存在の一つが、NMF(天然保湿因子)です。
NMFとは「Natural Moisturizing Factor(ナチュラル・モイスチャライジング・ファクター)」の略で、角層細胞の中に存在し、水分を保持する役割を担っています。
この記事では、肌の保湿を分かりやすくするために、
・クリームなどによって肌表面から補う保湿を「外側の保湿」
・NMFや細胞間脂質などによって角層内で水分を保持する仕組みを「内側の保湿」
と表現します。
肌のうるおいを考えるうえでは、「外から何を塗るか」だけでなく、肌の「内側の保湿」がどのように働いているかを知ることが大切です。
この記事では、NMFの成分や働き、セラミドとの違い、「外側の保湿」と「内側の保湿」の関係、さらにインナードライとの関係まで詳しく解説します。
NMF(天然保湿因子)とは?
NMFとは「Natural Moisturizing Factor」の頭文字を取った言葉で、日本語では「天然保湿因子」と呼ばれています。
赤ちゃんのような、もっちりとうるおった肌。
そのような水分をしっかり抱え込める肌を支えている要素の一つが、NMFです。
肌の一番外側には「角層」があり、角層細胞がレンガのように重なっています。
NMFは、その角層細胞の中に存在する、水となじみやすい成分の集まりです。
水分を取り込み、角層細胞の中に保持することで、肌のうるおいや柔軟性を保つ役割を担っています。
つまりNMFは、私たちの肌にもともと備わっている「内側の保湿」を支える仕組みの一つなのです。
NMFは何からできている?
NMFは、一つの成分の名称ではありません。
主に次のような、水となじみやすい成分によって構成されています。
- ・アミノ酸
- ・PCA(ピロリドンカルボン酸)およびその塩
- ・乳酸塩
- ・尿素
- ・ミネラル塩
- ・糖類
- ・有機酸など
中でも大きな割合を占めているのがアミノ酸です。
これらの成分が角層細胞の中で水分となじみ、水分を保持することで肌のうるおいを支えています。
NMFとは一つの特別な保湿成分ではなく、複数の水溶性成分によって構成された、肌自身が持つ天然の保湿システムと考えると分かりやすいでしょう。
肌の保湿には「外側の保湿」と「内側の保湿」がある
肌の保湿というと、クリームや乳液などを塗ることをイメージしがちです。
もちろん、肌表面から水分が失われることを防ぐ「外側の保湿」は重要です。
しかし、それと同じように大切なのが、角層そのものが水分を保持する「内側の保湿」です。

外側の保湿:皮脂膜やクリームなどで水分蒸発を防ぐ
肌の表面では、皮脂や汗などによって「皮脂膜」が形成されています。
皮脂膜は肌表面を覆うことで、角層から水分が過剰に蒸発することを防ぐ役割を担っています。
スキンケアでは、乳液やクリームなどの油分を含む化粧品が、この「外側の保湿」をサポートします。
つまり外側の保湿とは、肌表面を覆い、水分を逃がしにくくする保湿です。
内側の保湿:NMFと細胞間脂質が角層内で水分を保つ
一方、角層の中でも水分を保持する仕組みが働いています。
その代表がNMF(天然保湿因子)と細胞間脂質です。
NMFは角層細胞の中に存在し、水分を取り込み、保持します。
角層細胞と角層細胞の間には「細胞間脂質」が存在し、その代表的な成分が「セラミド」です。
細胞間脂質は角層細胞の間で水分を保持するとともに、角層のバリア機能を支えています。

つまり、この記事でいう「内側の保湿」は、主に
NMF=角層細胞の中で水分を保持する
細胞間脂質=角層細胞の間で水分を保持する
という2つの仕組みによって支えられています。
そして、そのさらに外側を皮脂膜やクリームなどが覆い、水分が逃げるのを防いでいます。
「外側の保湿」だけでなく「内側の保湿」が大切な理由
肌の保湿では、「何を塗るか」だけに目が向きやすいものです。
しかし、肌表面をクリームなどで覆うことだけでなく、角層そのものが水分を保持できる状態になっていることも大切です。
これを「水を入れる器」にたとえて考えてみましょう。
肌に水分を与えることを「器に水を注ぐこと」だとすると、NMFや細胞間脂質は、その水分を角層の中に保持するための「器の状態」に関わっています。
皮脂膜やクリームなどの外側の保湿は、その器から水分が逃げにくいようにサポートする役割を持っています。
つまり、肌の保湿には、
・水分や保湿成分を補うこと
・角層の中で水分を保持すること
・肌表面から水分が逃げることを防ぐこと
のすべてが関係しています。
「保湿=クリームを塗ること」だけではなく、NMFをはじめとする「内側の保湿」にも目を向けることが大切なのです。
NMFとセラミドの違いとは?
NMFと一緒によく名前が挙がるのが「セラミド」です。
どちらも肌のうるおいを保つために重要ですが、存在する場所と役割が異なります。
NMF(天然保湿因子)
NMFは角層細胞の中に存在し、水分を取り込み、角層細胞内に保持する役割があります。
セラミド
セラミドは細胞間脂質を構成する代表的な成分で、角層細胞と角層細胞の間に存在しています。
水分を保持するとともに、角層の隙間を満たし、バリア機能を支える役割があります。
NMFとセラミドは「どちらが重要」というものではなく、それぞれ違う場所で「内側の保湿」を支えている存在です。
NMFはどのように作られる?
NMFは、肌の角化、いわゆるターンオーバーの過程と深く関係しています。
表皮では新しい細胞が生まれ、徐々に肌表面へ押し上げられて角層細胞へ変化し、最終的には自然にはがれ落ちていきます。
この過程で「フィラグリン」というタンパク質が分解され、その一部からアミノ酸などのNMF成分が作られます。
つまりNMFは、角層が形成されていく過程の中で生み出される天然の保湿成分です。
そのため「内側の保湿」を考えるうえでは、外から保湿成分を補うだけでなく、肌のターンオーバーが健やかに働く角層環境を保つことも大切です。
肌のターンオーバーの仕組みについては、「肌のターンオーバーとは?老化との関係と仕組みを解説」でも詳しく紹介しています。
年齢とともに変化する「内側の保湿」
年齢を重ねると、皮脂量や角層の水分状態など、肌のうるおいを保つ環境は少しずつ変化していきます。
保湿というと、クリームなどで肌表面を補う「外側の保湿」に注目しがちですが、同じように大切なのが、NMF(天然保湿因子)や細胞間脂質が関わる「内側の保湿」です。
NMFは、肌のターンオーバー(角化)の過程で作られる成分です。
そのため、年齢とともに変化する「内側の保湿」に目を向け、肌本来のターンオーバーが健やかに働く状態を保つことが大切です。
外側からうるおいを補うだけでなく、NMFや細胞間脂質が働く角層環境にも目を向けながら、肌の保湿を考えていきましょう。
NMFが不足すると肌はどうなる?
NMFは角層細胞内で水分を保持する重要な役割を担っています。
NMFが少ない状態や角層の保湿機能が十分に働いていない状態では、角層が水分を保持しにくくなり、カサつきやつっぱり、ごわつきなどの乾燥を感じやすくなることがあります。
角層の水分が不足するとバリア機能にも影響し、外部からの刺激を受けやすい肌状態につながる場合があります。
肌の保湿では、水分をただ「与える」だけではなく、角層の中に水分を保持できる状態を整えることが重要です。
「内側の保湿」とインナードライの関係
「内側の保湿」を考えるうえで、分かりやすい例の一つが「インナードライ」です。
インナードライとは正式な医学的な病名ではありませんが、一般的には、肌表面には皮脂がある一方で、角層の水分が不足している肌状態を表す言葉として使われています。
例えば、
「Tゾーンはベタつくのに頬は乾燥する」
「皮脂は多いのに洗顔後につっぱる」
「見た目はオイリーなのに肌がカサつく」
といった状態です。

角層が乾燥していても、皮脂が多いケースがある
ここで大切なのは、皮脂量と角層の水分量は別のものだということです。
肌表面に皮脂が多く、ベタつきを感じていても、角層の中まで十分にうるおっているとは限りません。
例えば、乾燥などによって角層の水分保持状態が低下している一方で、肌表面には皮脂が多いという状態もあります。
つまり、
角層の水分が不足している
↓
一方で肌表面には皮脂がある
↓
「外側はベタつくのに、内側は乾燥している」状態になる
というケースです。
このような状態が、一般に「インナードライ」と呼ばれる肌状態の一つです。
見た目や触った感触だけではオイリー肌に感じても、肌の「内側の保湿」が十分とは限りません。
だからこそ、皮脂の量だけで判断するのではなく、NMFや細胞間脂質が関わる角層の水分保持状態にも目を向けることが大切です。
肌がベタつく=十分に保湿されている、ではない
皮脂が多いと、「保湿は必要ない」と考えてしまうことがあります。
しかし、皮脂があることと、NMFや細胞間脂質によって角層内に十分な水分が保持されていることは別の話です。
肌表面がベタついていても、「内側の保湿」が十分とは限りません。
肌状態を見るときには皮脂だけではなく、
・洗顔後につっぱらないか
・頬などが部分的にカサついていないか
・肌がごわついていないか
・乾燥による刺激を感じやすくなっていないか
など、角層の乾燥状態も含めて考えることが大切です。
「内側の保湿」を意識したスキンケアとは?
「内側の保湿」を意識するうえで大切なのは、NMFだけを増やそうとするのではなく、角層に水分や保湿成分を補い、その水分を保持し、外へ逃げにくい環境を整えることです。
化粧水や美容液で水分・保湿成分を補う
化粧水や美容液などを使って、角層に水分や保湿成分を補います。
NMFを構成するアミノ酸やPCAなどに着目した化粧品もあります。
ただし、特定の成分だけを補えば十分というわけではなく、NMF、細胞間脂質、皮脂膜など、肌全体の保湿環境を考えることが重要です。
セラミドなど、細胞間脂質にも着目する
NMFが角層細胞の中で水分を保持する一方、セラミドなどの細胞間脂質は角層細胞の間で水分を保持しています。
そのため「内側の保湿」を考えるうえでは、アミノ酸などの水溶性保湿成分だけではなく、セラミドなどに着目することも一つの方法です。
乳液やクリームによる「外側の保湿」も大切
「内側の保湿が大切」ということは、「クリームは必要ない」という意味ではありません。
乳液やクリームなどの油分を含む化粧品には、肌表面を整え、角層から水分が過剰に蒸発することを防ぐ役割があります。
「内側の保湿」と「外側の保湿」は、どちらか一方を選ぶものではありません。
肌質や季節、年齢、その日の肌状態に合わせて、両方をバランスよく取り入れることが大切です。
NMFを増やすには?
NMFは、肌のターンオーバー(角化)の過程で作られます。
そのため、特定の化粧品で単純にNMFを増やそうとするのではなく、過度な洗浄や摩擦を避け、適切な保湿ケアを行い、肌本来のターンオーバーが健やかに働く角層環境を保つことを意識しましょう。
NMFは化粧品で補える?
NMFを構成するアミノ酸やPCAなどは、化粧品の保湿成分として利用されています。
ただし、化粧品を使うことで「肌自身が作るNMFが必ず増える」という意味ではありません。
スキンケアでは、角層に水分や保湿成分を補い、NMFや細胞間脂質が働く角層の保湿環境を整えることが大切です。
4Dダイナミックシリーズについて詳しく知りたい方は、「4Dダイナミックシリーズとは?」もあわせてご覧ください。
さいごに
NMFとは「Natural Moisturizing Factor」の略で、「天然保湿因子」と呼ばれる肌の保湿に重要な要素の一つです。
NMFは角層細胞の中に存在し、アミノ酸などの水となじみやすい成分によって水分を保持しています。
肌の保湿というと、化粧水やクリームなど「外から何を塗るか」に目が向きがちです。
しかし、肌にはもともと、NMFや細胞間脂質によって角層内に水分を保持する「内側の保湿」の仕組みがあります。
外側の保湿=肌表面を覆い、水分を逃がしにくくすること
内側の保湿=NMFや細胞間脂質によって、角層の中に水分を保持すること
この2つを分けて考えると、「肌がベタついているから十分にうるおっているとは限らない」というインナードライの状態も理解しやすくなります。
年齢や季節、生活環境によって肌の保湿環境は変化します。
だからこそ、外側を補うだけではなく、NMFをはじめとする「内側の保湿」にも目を向けながら、自分の肌状態に合ったスキンケアを選ぶことが大切です。
