「針美容液」「リードル系コスメ」などで目にすることが増えたスピキュール。
スピキュールとは、もともと海綿などの体を支える微細な針状の骨格構造を指す言葉です。美容分野では、この特徴的な形状を生かした原料が美容液やクリームなどに使われています。
「針」と聞くと、チクチクする刺激やスピキュールそのものの美容効果に目が向きやすいかもしれません。
しかし、スピキュール配合化粧品を見るうえで大切なのは、それだけではありません。
スピキュールは、その微細な形状を利用した皮膚への物質送達について研究されている素材です。だからこそ、「スピキュールが入っているか」だけではなく、スピキュールと一緒に何を配合し、それらをどのようなスキンケアとして設計しているのかまで見ることが重要です。
この記事では、スピキュールとは何なのか、マイクロニードルとの違い、研究で分かっていること、肌にどのくらい残るのか、使う際の注意点、さらに「美容成分を肌へどう届けるか」を研究してきたovacoの考え方まで分かりやすく解説します。
スピキュールとは?
英語の「spicule」は、小さな針状の構造を表す言葉です。
海綿の多くは、シリカや炭酸カルシウムなどからなるスピキュールを骨格の一部として持っています。形や大きさは海綿の種類によって異なり、細長い針のような形状を持つものもあります。
美容分野では、海綿由来の微細な針状構造を精製・加工した原料が、クリームや美容液などに利用されています。

全成分表示では「加水分解カイメン」などの名称が記載されている製品があります。
「天然マイクロニードル」「美容針」「リードル」などと呼ばれることもありますが、これらは必ずしもすべて同じ原料や技術を意味する言葉ではありません。
スピキュールとマイクロニードルは同じもの?
スピキュールとマイクロニードルは近い文脈で使われますが、本来は同じ意味ではありません。

スピキュール
海綿などに由来する微細な針状素材そのものを指します。化粧品では、クリームや美容液などの中へ分散させて使用されることがあります。
溶解型マイクロニードル
ヒアルロン酸などを微細な突起状に成形したパッチなどです。肌へ一定時間貼り付け、突起部分が溶けるように設計された製品があります。
マイクロニードリング
専用の微細な針を備えた器具を使用する施術です。家庭で使用するスピキュール配合化粧品とは、使用する器具や方法、管理方法などが異なります。
一方、研究論文では海綿由来スピキュールを「topical microneedles」と表現する例もあります。
つまり、スピキュールは「素材」の名称であり、その微細な針状構造がマイクロニードルのような送達手段として研究されていると考えると分かりやすいでしょう。
スピキュールは何のために化粧品へ使われる?
皮膚には、外部から異物が簡単に入り込まないようにするバリア機能があります。
そのため美容や医薬分野では、「必要な物質を皮膚へどのように届けるか」という研究が長く行われており、海綿由来のスピキュールもその研究対象の一つです。

ここで重要なのは、スピキュールを一般的な保湿成分や整肌成分と同じように考えないことです。
美容分野で注目されているのは、スピキュールそのものを肌へ補うことよりも、その微細な形状を、ほかの美容成分と組み合わせたスキンケア設計へどのように生かすかという点です。
つまり、スピキュール配合化粧品では「スピキュールそのものに何ができるか」だけではなく、スピキュールと一緒に何を使い、どのような目的で製品全体を設計しているのかを見ることが大切です。
もちろん、スピキュールが配合されているからといって、一緒に配合されたすべての美容成分が同じように角質層へ移行するわけではありません。
スピキュールの種類や形状、量、美容成分の性質、完成品としての処方などによって条件は異なります。
スピキュールの効果は?研究と化粧品設計から考える
海綿由来スピキュールについては、皮膚への物質送達を目的とした研究があります。
2017年の研究では、特定の海綿由来スピキュールを使い、水溶性の高分子を皮膚へ届ける方法が検討されました。
豚皮膚を用いた試験や動物試験では、スピキュールによる物理的な変化が、試験物質の皮膚への移行に影響することが報告されています。
2022年にも、天然スピキュールを利用した皮膚送達システムについて研究が行われています。
一方、これらは特定のスピキュール、量、試験物質、塗布方法などを設定した研究です。
そのため、「スピキュールが入っているから毛穴に良い」「しわに良い」「肌が再生する」といったように、スピキュールという素材だけから完成品の美容効果を判断することはできません。
スピキュール配合化粧品で重要なのは、スピキュールをどのような目的で使い、どの美容成分と組み合わせ、製品全体としてどのようなスキンケアを目指しているのかという点です。
スピキュールは肌に72時間残る?
スピキュールについて調べると、「72時間作用する」「2〜3日残る」といった説明を目にすることがあります。
2017年の研究では、特定のシリカ質スピキュールが皮膚内に少なくとも72時間保持されたことが報告されています。
また、スペインのOVACO取扱サイトでは「Perfectionist Spicule Cream」について、塗布後72時間作用し、微細な針状成分は2〜3日で皮膚内で分解されると説明されています。
ただし、この「2〜3日で分解」という説明を、すべてのスピキュール原料や製品に共通する性質として考えることはできません。
一般研究で確認されている「72時間保持された」という結果も、それだけで「すべてのスピキュールが72時間後に完全に溶ける」ことを意味するものではありません。
したがって、OVACOの海外製品説明と、一般的なスピキュール研究は分けて理解するのが適切です。
チクチクするほど効果が高い?
スピキュール配合化粧品では、使用時にチクチクとした感覚を感じる場合があります。
しかし、刺激の強さは美容効果を測る指標ではありません。
同じ製品でも、肌状態や使用量、塗り方によって感じ方は変わります。
強い痛み、熱感、赤み、腫れ、かゆみなどが出た場合は、「効いている証拠」と考えて我慢せず、使用を中止してください。
スピキュール配合化粧品を選ぶときのポイント
「針」という言葉だけで選ばない
「美容針」「天然針」「マイクロニードル」と書かれていても、使用されている原料や加工方法、配合量などは製品によって異なります。
商品名だけではなく、全成分表示やメーカーの商品説明まで確認しましょう。
スピキュールよりも「何と組み合わせているか」を見る
スピキュール配合化粧品を選ぶとき、「何本入っているか」「どれくらいチクチクするか」だけに注目する必要はありません。
むしろ確認したいのは、スピキュールと一緒に、どのような保湿成分や整肌成分が配合されているのかです。
同じスピキュールを使用した化粧品でも、組み合わせる美容成分、処方、使用するタイミングが違えば、製品としての考え方も異なります。
スピキュールは製品設計の一部であり、スキンケアは配合成分全体の組み合わせで考える。この視点が大切です。
ファンデーションなどのメイク製品は処方全体を見る
近年では、ファンデーションなどのメイク製品にスピキュールを配合した商品も見られます。
ファンデーションには、顔料や粉体、皮膜形成成分など、主に肌表面で色や質感を整えるためのさまざまな成分が使われています。
一方、スピキュールは物質送達という観点でも研究されている素材です。
そのためメイク製品に配合されている場合も、「スピキュール入りだから良い」と考えるのではなく、なぜその製品へスピキュールを組み合わせているのか、ほかの成分も含めてどのような処方として設計されているのかまで確認したいところです。
なお、スピキュールと一緒に配合された成分が、すべて同じように角質層へ移行することを意味するものではありません。
数字だけで刺激の強さを比較しない
「100」「300」などの数字を商品名に使うブランドもありますが、ブランドをまたいだ共通規格とは限りません。
数字だけで刺激の強さやスピキュールの配合量を比較せず、それぞれの商品説明を確認しましょう。
スピキュール配合化粧品の基本的な使い方

基本は、製品ごとに指定されている使用量・使用頻度・使用順序を守ることです。
清潔な肌と手で使用し、必要以上に強くこすったり押し込んだりしないようにします。
初めて使用するときから、スクラブ、ピーリング、レチノールなど刺激を感じやすいケアをいくつも重ねると、違和感が出た際に原因を判断しにくくなります。
傷、腫れ、湿疹、強い赤みなどがある部分には使用せず、目や口のまわりなど使用を避ける場所についても製品の説明を確認しましょう。
ovacoは「美容成分をどう届けるか」から研究してきたブランド
スキンケアでは、「どんな美容成分が配合されているか」に注目しがちです。
しかし、ovacoの商品づくりの背景にあるのは、それだけではありません。
ovacoの開発・製造母体である韓国のSONIMEDI社は、化粧品原料や処方だけでなく、成分を皮膚へどのように届けるかという研究開発にも取り組んできた企業です。
日本のovaco公式サイトでも、ovacoはアメリカ・ドイツ・韓国のTDS専門研究チームによって研究開発されたブランドと説明されています。
TDSとは「Transdermal Delivery System(経皮送達システム)」のことです。
少し難しい言葉ですが、スキンケアの視点で分かりやすくいうと、「美容成分を肌へどのように届けるか」を考える技術・研究です。
SONIMEDIでは現在も、成分そのものの研究だけではなく、皮膚への送達を意識した素材や処方システムの研究開発を行っています。
つまりovacoの商品づくりでは、「何を配合するか」と同時に、「それをどう届ける設計にするか」という視点が大切にされています。
ovacoはスピキュールそのものではなく「トータル設計」を考える
ovacoが考えるスピキュールケアは、「針状成分を肌に使うこと」だけで完結するものではありません。
重要なのは、スピキュールとともに何を配合し、それらをどのようなスキンケアとして組み立てるかです。
「オバコ 極上のスピキュールクリーム」には、加水分解カイメン由来の微細な針状成分に加え、DNA-Na、アセチルヘキサペプチド-8、トリペプチド-1銅、ナイアシンアミドなど、複数の整肌成分が配合されています。
つまりovacoでは、スピキュールだけを美容成分の主役として考えるのではなく、複数の整肌・保湿成分と組み合わせた一つのスキンケア設計として考えているということです。
これは、長年TDS、つまり「美容成分を肌へどう届けるか」という研究を背景に商品を開発してきたovacoならではの考え方にもつながっています。
スピキュールについてよくある質問
スピキュールは毎日使えますか?
毎日使用することを想定した製品もあれば、使用間隔が指定されている製品もあります。使用頻度を増やせば美容効果が高くなるとは限らないため、メーカーが案内する使用方法に従いましょう。
スピキュールは毛穴やしわ、ニキビに効果がありますか?
「スピキュール」という素材だけで、毛穴、しわ、ニキビなど特定の肌悩みへの効果を保証することはできません。
スピキュールの有無だけではなく、組み合わせている美容成分や、完成品としてどのような目的で設計された化粧品なのかを確認しましょう。
「加水分解カイメン」と書かれていれば同じスピキュールですか?
スピキュール化粧品では「加水分解カイメン」という表示名称が使われることがあります。
ただし、同じ表示名称でも原料の加工方法や配合量、組み合わせる成分、製品全体の処方まで同じとは限りません。
さいごに
スピキュールとは、海綿などが持つ微細な針状の骨格構造に由来する素材です。
美容分野では、その微細な形状を利用した皮膚への物質送達について研究されています。
しかし、スピキュール配合化粧品を選ぶうえで本当に大切なのは、「スピキュールが入っているか」だけではありません。
どのような美容成分と組み合わせ、どのような処方にし、どのような使い方を想定しているのか。
つまり、スピキュールとともに「何を肌へ届けることを考えた化粧品なのか」を見ることが重要です。
ovacoは、TDSという「美容成分を肌へどう届けるか」という研究を背景に、スピキュールだけではなく、そこに組み合わせる美容成分や使用方法まで含めたトータルなスキンケア設計を考えてきたブランドです。
「針が入っているから選ぶ」のではなく、「何を、どう届けるために設計された化粧品なのかを見る」。
スピキュール配合化粧品を選ぶ際には、そんな視点も持ってみてください。
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参考文献・参考情報
- ・Łukowiak M, et al. “The terminology of sponge spicules.” Journal of Morphology. 2022.
- ・Zhang S, et al. “Skin Delivery of Hydrophilic Biomacromolecules Using Marine Sponge Spicules.” Molecular Pharmaceutics. 2017.
- ・Kim TG, et al. “A novel dermal delivery system using natural spicules for cosmetics and therapeutics.” Journal of Cosmetic Dermatology. 2022.
- ・ovaco(株式会社エスター)「ovacoバックグラウンド」
- ・SONIMEDI「Bio Cell Fusion Science Institute」
- ・SONIMEDI「Development Overview」
- ・Silvia Moreno「EL BIO-MICRONEEDLE – PERFECTIONIST SPICULE CREAM」
- ・日本化粧品工業会「化粧品等の適正広告ガイドライン」
本記事は一般的な化粧品・スキンケア情報を提供するもので、特定製品の効能を保証するものではなく、医療診断や治療を目的とするものでもありません。強い、または続く赤み、腫れ、かゆみ、熱感、痛みなどがある場合は使用を中止し、皮膚科専門医等へ相談してください。
